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知床観光船で知床半島へ1(斜里町)

知床半島は北海道の東部、オホーツク海に突き出した半島で、アイヌ語の「シリエトク(地の果て)」が語源とされています。ここには絶滅が危惧される野生の動物を含め、多種多様な生物と原始状態の自然景観が残っていることから周囲の海域を含めて国立公園に指定されています。2005年7月には日本で3番目の世界自然遺産にも登録されました。

この知床半島の自然を海から安全に観察できる観光船がウトロ港からいくつか出ています。
今回は、旅人宿「ボンズホーム」が企画している知床自然観察船(ネイチャーウォッチングボート)に乗船することに。小型船を利用しているため、大型船よりも陸の側まで近づいて観察でき、また、時間をかけて航行することで、じっくり知床を観察できるというのがこの船の売りです。

オリジナルブランド「栗じゃがいも」を使った料理が人気。こちらはチーズ焼き。

宿に宿泊して翌日の乗船を予約。乗船客が少なくても運航する他の観光船と違い、ここの船は最小運航人数である8人の乗船希望がないと休航となります。ですので、予約したからといって安心はできません。この日泊まりあわせた旅人のうち乗船希望者は3人。あと5人の乗船希望者が現れないことには乗れません。

翌朝、朝食後に本日の運航の有無が発表されるも、8人集まらなかったため欠航。
この日のウトロは1年に数回あるかどうかの良い天気だったとのこと…残念。

翌々日は、弟子屈町の宿からウトロに向けて出発。空を見るとどんよりとした曇り。天候が良くなることを期待してウトロに向けてバイクを走らせるも、ウトロに近づくにつれ空はどんどん暗くなっていき、ついには雨に。
知床自然観察船のほうも、天候不良のため欠航となりました。

ここの船は乗船希望者が少ないときだけでなく、波が高いときや天気が悪いときにも欠航になります。台風や時化は別として、そのような日に出航しても船酔いするだけで楽しくない、せっかく乗るのなら良い想い出を作ってもらいたい、と考えてのことだそうです。

もし日程の都合上、どうしてもその日に船で知床観光をしたいのでだったら、観光協会の大型船のほうへ。大型船が出港するのはこの船の出港時刻よりもだいぶ後なのでそういう選択もできるのです。

翌々々日も弟子屈町からウトロへ。ボンズホームに着くと入口の運航情報掲示板に「本日は出航します」の文字が。3度目の正直という諺はこういうことを言うのでしょう。
宿のオーナーに案内されて船のあるウトロ港へ。

案内された船は漁船。正確には、漁に使う装備を取り払って椅子を並べた改造漁船。しかも、椅子は背もたれが直角型で座り心地はあまり良いとはいえない感じ。

直角椅子に腰をおろすと「バキッ」という音とともに体が沈んでいく…老朽化した椅子が壊れてしまったのでした。このときはこれが不吉の前兆であったということには気づきませんでした。

全員が椅子に座ると船は出航。
船長の話では、往路は海岸からほんの少し離れて航行し、帰路は海岸近くを沿うように進むそうです。

ウトロ岬を回り込んでまずはフレペの滝に到着。要所要所で船を止めて船長さんはガイドをしてくれます。声が聞き取りやすいようにエンジンを切ってくれる配慮も。いつもは陸からみるフレペの滝も海から見るとまた別の姿に見えて新鮮です。

説明が終わり、再びエンジンを始動させてようと、船長がスターターを回すもなかなか掛からない様子。
何度か試みた後、船長さんがこちらに歩いてきて一言「エンジンが壊れてしまって、ただいま漂流しています~」と。

動かなければ漂流し続けるしかありません。そこで、船長は無線機を使って救援を要請。
まもなく、近くを同業者のクルーザーが通りかかりました。しかし、助けてくれることもなく、近くまで来てそのまま去っていってしまった。

しばらくすると、遠くから近づいてくる一隻の船が。

助けに駆けつけてくれた船は漁船。喫水が上がっているのは漁の帰りでしょうか。

私たちの乗っている船は自航できないため、漁船で牽引してもらうことになりました。
車の牽引はよく見ますが、船の牽引(曳航)は初めて。牽く側の船尾と牽かれる側の船首をロープで繋ぎウトロ港へ向かいます。

そして、港の入口に近づくと今度は船が隣り合う形になるようにロープを結び直して港へ。このように連結することで、多くの漁船が停泊する港の中でもうまく曳航できるのです。漁師さんの巧みな操舵技術に見入っているうちに船は無事に接岸。

ツアーが途中で中止になったため、乗船料は払い戻し。
ボンズホームに戻り、オーナーに今日の出来事を話すと、船が壊れるなんて10年に1度あるかどうかのことなのだとか。

ツアーが途中で中止になったのは残念ですが、無料で1日目の「年に数回しかないくらいの快晴の日」よりもさらに希な出来事を体験できたことに少し得したような気がしたのは私だけでしょうか。

(つづく)

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