フェリーらべんだあ、ニューあかしあは、舞鶴港(京都府)~小樽港(北海道)間を航路としていた新日本海フェリー株式会社の姉妹船です。就航年に少し開きがあるものの、バブル景気の最中に建造された船であるため、展望風呂以外に上等室利用客用の内風呂があったり、広いラウンジや車両甲板から客室へ上がるエスカレータや船尾外部デッキにプールがあったりと贅沢・豪華な設備が特徴でした。
当時は深夜23時30分に出港し、翌々日の早朝4時30分に到着するダイヤで、19時間で到着する現在の高速フェリーと違って29時間も要し、船の中で2泊しないと目的地には着きませんでした。船の中にいると、体を動かすこともなく食べる、寝るを繰り返しで過ごすので、2泊目になるとベッドに横になっても眠れなくなってしまうのです。そして、ようやく寝付けたと思ったら午前3時過ぎに下船準備を促す船内放送が流れ、室内照明が一斉に点灯してたたき起こされるという…..船旅の終わりは拷問のようでした。
とはいえ、現在のように夜ではなく、早朝に到着するので、到着した日は夕方まで丸一日、目一杯行動することができ、おまけに宿代が1泊分節約できることから、ありがたい船でした。初めて乗った長距離フェリーがこの2隻で、しかも、それが初めての北海道ツーリングでの利用でもあったことから、個人的にはとても印象に残っている船です。(1994年~2003年乗船)
案内所(左上)
ホテルのフロントのような存在。2等寝台以上の部屋を利用する場合はここでチェックインし、部屋の鍵を受け取る。貴重品を預かってくれるほか、個室向けのレンタルビデオの貸し出しもしていました。
近くに衛星を使って通信する電話もある。海上では携帯の電波が届かないのでいざというときには役に立ちます。通話料が高く、みるみるテレホンカードが減っていくのが難点でした。
給湯室(右上)
節約旅にはありがたい設備。ここで湯が手にはいるので、持ち込んだインスタント食品やコーヒー、スープを飲食することができました。隣にあるのは冷水器。利用者は多く、脇のゴミ箱は食事時間が過ぎた後はインスタント食品の空き容器で溢れかえってました。
ゲームコーナー(左下)
最新のゲームはなく少し古いものが並んでいました。現在の船にもこのコーナーはあるものの、いつ覗いても人は少ない…..というかほとんどいません。
廊下(右下)
船内の通路。この両脇に個室が並びます。ビジネスホテルと違うのは壁に手すりがあること。船が揺れるときにはこれを頼りに移動することになります。階によって敷かれている絨毯が異なり、上等級の部屋ほど絨毯の毛が長くてふかふかしていました。
フォワードサロン(左上)
スモーキングルーム(左下)
船首にあるくつろぎ部屋。上階のフォワードサロンは禁煙室、下階のスモーキングルームが喫煙室になっていて、就寝時は両部屋とも閉鎖されました。
プロムナード
船の両サイドにある展望スペース。2つの椅子につき1つの小さなテーブルが通路沿いに並び、海を眺めながら座ってのんびりできる。コストダウンされた今の船の椅子と違って、座面が広く、背もたれも適度に傾斜していて座り心地が良かったです。
レストスペース浴室を出たところにあるくつろぎスペース。
ソファと大型テレビが置かれていた。場所が場所だけに風呂上がりに休憩している人が多かった。現在の新日本海フェリーの船はこれがない代わりにエントランスホールが広くなっています。
レストラン
好みの料理皿をとってトレーに載せていき、最後にレジで支払うというカフェテリア式のレストラン。陸上と比べると高めの価格設定だが温かいものが食べられるのはありがたい。営業時間が短いので、寝坊すると食事抜きになることも。
テイクアウトコーナー
何度かこの船に乗ったが一度も営業していることがなかった謎のコーナー。名前からすると持ち帰れる軽食が売られていた様子。隣にはジュースやビールの自販機が並んでいる。当時は陸上よりも高い価格設定になっていました。
グリル
ちょっとリッチなレストラン。予約制でコース料理も味わえる。貧乏旅の作者は一度も入ることがなかった。売店航海中常時営業しているわけではなく、短時間営業を繰り返す売店。北海道の土産物やお菓子、飲料、雑誌が売られている。土産を買い忘れた人や、旅中の荷物が増えるのを避けてここで調達することもできる。当時は船内の飲食施設の利用を促すためか、インスタント食品は売られていませんでした。
展望浴室
海を見ながら湯に浸かることができます。この時代はまだバリアフリーは考慮されておらず、浴槽と洗い場の段差が大きいものでした。
洗面所
トイレ入口にある洗面所。鏡の脇にはコンセントがあり、蛇口からは湯も出る。上陸日の早朝はみんな一斉に起きる(起こされる)ので大混雑しました。
コインランドリー
乾燥機付きで洗剤の自動販売機もあるので気軽に利用できます。船中2泊だったので、利用する機会も多々ありました。
卓球台
風呂上がりはやはり卓球!? 案内所でラケットとピンポン球のレンタルをしていました。
外部デッキ(順に船首、側部、船尾)
現在の高速フェリーと違って、船首、側部、船尾すべて外に通路があり、航海中も自由に出ることができ、ぐるりと一周できて、とても開放感があった。あちこちに置かれたベンチやチェアでは、天気の良い日に昼寝をしている人が見られ、まさに船旅といった光景。壁に○×の印がある木床の所では繁忙期にイベントが開催されていました。
~バブルな時代を感じさせる設備~
ラウンジ
午前と午後の上映時間以外はフリースペースとなっていて、ほとんど人が来ないので、本を読んだり昼寝するには最適の場所であった。これ以降に建造された船ではラウンジが廃止され、代わりにシアタールームという上映専用の小部屋が設けられるようになっています。
屋外プール
船尾外部デッキにあるプール。船が沖に出ると、海水が汲み上げられて利用できるようになっていました。
ジャグジー
水着を着て利用するタイプのサウナ。後に建造された高速船にもサウナルームはありますが、この船のようにジャグジーまでは付いていません。案内所でレンタルの水着もあるものの、透明ガラス張りで外から見せ物的になる感があるのか利用客はほとんど見かけませんでした。
もう一つの浴室1等室以上の乗船客向けの浴室
船の中央にあるため窓はなく共同浴場のような雰囲気。展望風呂のほうが人気があるので、こちらを利用する人はほとんどおらず貸し切り状態で入ることができました。船内に2つも風呂があるのはこの2隻だけ。
エスカレータ
車輌甲板から客室へ上がるためのもの。船の乗下船のときにしか使われないのにエスカレータを設ける贅沢さ。
スポーツルーム
長い船旅で運動不足にならないよう、自転車こぎ等の運動器具が並んでいました。
階段
階段部は客室1~3階まで吹き抜け構造となっていました。現在の船のようにピカピカの金属を使わず、装飾を施した木製の手すりを使用。実はこっちのほうがコストがかかっていたりします。
ビデオエッグ
エントランスホールに並ぶ怪しい物体の正体はレンタルビデオを見るための個室。中が快適かどうかはともかく、スペース効率を無視した贅沢な設備でした。
全長 | 192m |
全幅 | 29m |
総トン数 | 19,904t |
旅客定員 | 796名 |
車両積載台数 | 乗用車80台、トラック186台 |
造船所 | 石川島播磨重工 |
- フェリーらべんだあは、2004年6月に引退しました。その後はギリシャで旅客フェリー「IONIAN KING」として活躍していましたが、2011年に長崎ハウステンボスのグループ会社が購入し、同年11月より長崎~上海間を航路とする旅客フェリー「OCEAN ROSE」として運用されることとなりました。(2011年追記)
- フェリーらべんだあは、2013年に「OCEAN ROSE」から「Ocean Grand」に船名が変更されました。(2017年追記)
- ニューあかしあは、2004年6月に引退しました。その後はフィリピンで旅客フェリー「IONIAN QUEEN」として活躍しています。(2011年追記)