いしかり(3代目)は、いしかり(2代目)の代替船として2011年に就航した、名古屋~仙台~苫小牧間を航路とする太平洋フェリー株式会社のフェリーです。毎日、夜のラウンジショーや昼のピアノ演奏イベントを開催する等の旅客サービスを行っているのがこの会社のフェリーの特徴で、船内は年配の団体ツアー客で賑わっているのをよく見かけます。きそ(2代目)から防振製の高いエンジンに変わり快適性を向上、船内は「エーゲ海の輝き」をコンセプトとした、青と白を基調としたデザインで明るく、広さを感じさせます。

先代いしかりと比較すると、客室層最上階にあったラウンジが、現行いしかりでは中層階に配置されたため、その分パブリックスペース全体が狭くなっています。また、バーや宴会場、外部甲板のオープンスカイホールが廃止され、ミニシアターがラウンジに統廃合されています。「きそ」と比べても、1等室(インサイド)の吹き抜け廃止、3面シーサイドビューのレストランの右舷側への移動等、合理化が進んでいることを感じます。新しい「いしかり」か、船体は古いものの設備がまだ豪華な「きそ」のどちらに乗船するか悩むところ。(2012年乗船)

客室は、個室のスイートルーム(ロイヤルスイート、セミスイート、スイート)、特等(洋室、和室)、1等(洋室、和室、和洋室、バリアフリー対応洋室)と相部屋のS寝台、B寝台、2等和室の6クラス。きそと比べると、2等和室の定員・部屋数を半減させ、B寝台が1.5倍に増えています。

2等和室は雑魚寝タイプの部屋で、各部屋には脱衣室が備わります。「きそ」と比べると、寝る際に頭付近となる箇所に仕切板が設けられプライバシー配慮がされています。手荷物の保管スペースは頭上となり容量もアップ。

B寝台は上下段の入口が別になっているセパレート式の2段ベッド。S寝台は1段ベッドで天井が高く、ベッドスペース内にテレビが備わります。どちらも横引きカーテンではなく、ロールカーテンが使われているため、暑いときの温度調整がしずらいのが難点。色調以外は「きそ」から変わっていません。


1等室以上の個室とS寝台の女性専用室のドアはカードキーが導入されています。
1等室は個室でトイレとシャワールームが備わります。4タイプありますが、洋室タイプは海の見えないインサイド側にあり、きそにあった吹き抜けが廃止され、採光窓もないため快適性は低下。海側で室内も広い1等和洋室のほうをおすすめします。こちらも色調以外は「きそ」から変わっていません。

特等室は、トイレ・シャワールームがユニットバスにグレードアップ。スイートクラスになると部屋が広くなり、乗船中の食事がセットで付きます。
最上級のロイヤルスイートは、寝室とリビングの2部屋に分かれています。太平洋フェリーでは、スイートクラスは船の揺れの影響を受けやすい船首に配置されているため、海の状態が良くない日は船体中央寄りの特等や1等室にするほうが無難。


レストラン「サントリーニ」は、朝昼晩ともバイキング形式。夕食の人気メニューの牛ロースステーキは、2015年1月から牛脂注入肉になり、にぎり寿司もミニ海鮮丼に変わってしまいました…料金は同じなので実質グレードダウンしています。
他に軽食やアルコールを含めた飲料を扱うスタンド「ヨットクラブ」や、おつまみ等を扱う売店があります。こちらのフェリー会社では、パブリックスペースでのインスタント食品の飲食は禁止されていますので、個室で食べる等、場所には注意が必要です。


展望大浴場は、浴室、脱衣所とも並クラスの広さで、大きな窓があり、海を眺めながら湯に浸かることができます。浴槽は「きそ」と比べると小さめ。「きそ」にあった寝湯やサウナは廃止されています。

シアターラウンジ「ミコノス」では、毎晩ラウンジショーが開かれ、他の時間には映画の上映されています。「きそ」では船体中央にあったシアターラウンジが、船体中央から船体後部に移設されています。また、「きそ」の各席には備え付けられていたテーブルが廃止されています。


パブリックスペースには、くつろげるスペースとして、通路沿いに椅子と小さなテーブルが並ぶプロムナード(展望通路)やピアノステージ等があります。内装が明るい色調のため広く感じさせますが、「きそ」と比べると少し狭くなっていて、オープンバーは廃止されています。

外部甲板へは航行中も出ることができます。高速フェリーではないため、開放されている範囲は広いですが、旧いしかり(2代目)のようにトップデッキ(最上階)へは上がれなくなっており、「きそ」のような船尾の広いスペースもありません。


上記以外に、カラオケルームやキッズルーム、ゲームコーナー、飲料自販機、給湯室、ランドリールーム等の設備があります。

全長199.9
全幅27.0
総トン数15,762t
旅客定員777
車両積載台数乗用車47台、トラック189台
造船所三菱重工業下関造船所
いしかり(3代目)諸元