「すずらん」、「すいせん」は2012年に就航した、敦賀(福井県)~苫小牧(北海道)間を航路とする新日本海フェリー株式会社の姉妹船です。先代すずらん、すいせんと同じ高速フェリー型で、舞鶴~小樽間航路の同社「あかしあ」「はまなす」で導入されたCRP配置ハイブリッド型ポッド推進システム(通常のディーゼルエンジン駆動のスクリューの後ろにある舵に、もう一つの電動式スクリューを付けた「ポッド推進装置」があり、2つのスクリューを互いに逆回転させることで高出力を生み出す仕組み)を搭載し、20時間で目的地に到着します。
外観デザインや内装の質感は、先代すずらん、すいせんには及ばないものの、フェリー初の露天風呂やカップ麺コーナー、ドックフィールド等、他フェリー会社にも見られなかった新たな試みが所々で取り入れられているのが特徴。同社の現行フェリーの中では、客室とパブリックスペースのバランスが最もとれており、関西圏や東海圏から北海道をめざす人にはこちらの利用をおすすめします。(2012年、2014年、2015年乗船)
客室は、個室のスイートルーム、ジュニアスイートルーム、デラックスルームA(洋室、和室)、ステートルームA(洋室ツイン、洋室4名部屋、和室)と相部屋のツーリストS、ツーリストAの6クラスで、雑魚寝スタイルの大部屋は廃止されています。個室にはカード式のドアキーが導入され、先代すずらん、すいせんにはなかった、各個室専用テラスがデラックスルームA、ジュニアスイートルーム、スイートルームに設けられています。
ツーリストAは、この代から上下段で出入口が異なる階段式のものになりました。以降の「らべんだあ」「あざれあ」も同構造で、先に就航した舞鶴~小樽航路のあかしあ、はまなすも途中でこのタイプに改装されています。ツーリストSは、同社従来船では通路との間がカーテンで仕切られていたものが、閂(かんぬき)で施錠できる扉付きのものとなりました。ベッド以外のスペースも広く、トップケースやパニアケースを客室に持ち込むライダー等手荷物の多い人にはぴったりの部屋です。
ステートルームAは、個室内の設備がこれまで洗面台のみだったところにトイレが追加されているのが大きな改良点で、トイレの都度、部屋を出て共用トイレに少し歩いて行く手間がなくなりました。
3種類あるステートルームAのうち、ステートルームA(ツイン)はインサイドルームとなっています。従来船ではプライバシー面の配慮として、対向する部屋との間に遮蔽板が設置されていたものが、窓に角度をつけることで遮蔽板をなくし、開放感がアップしています。ステートルームA(4名部屋)は、従来船では2段式ベッドだったものが、プルマン式に変更され、奥に小上がりは廃止されています。ベッドを畳むとツイン部屋と同じ状態になります。
ツーリストA | ツーリストS | ステートルームA(ツイン) |
ステートルームA(4名部屋) | デラックスルームA | ジュニアスイートルーム |
レストランは、入口でトレーをとってカウンターに並んだ料理から好きなものをとってレジで精算するカフェテリア形式で、船体後部の3面オーシャンビューの配置で、外の景色を眺めながら食事ができます。グリルは予約制でコース料理が楽しめる1ランク上の施設です。同社他フェリーでは通路を挟んだ内側に配置されて、磨りガラスなところ、このフェリーではアウトサイドにあって外の景色が眺めながら食事できて良いです。
レストラン | グリル | カフェ |
カフェ付近ホール付近スペース | プロムナード | フォワードサロン |
浴室 | 露天風呂 | オープンテラス |
コンファレンスルームは、客室層の最上階にあり、映画が上映されています。従来船では、平らな部屋にパイプ椅子を並べた簡素なものでしたが、このフェリーでは、映画館のように後席に行くほど席の位置が高くなる本格的な造りになっています。ただ、せっかくの設備なのに映画上映にしか使われていないのは勿体ないですね。ビンゴ大会の参加者を収容するにはスペースが足りませんが、ミニコンサート等だったら使えるのでは。
カップ麺コーナーは、カップ麺を作り、食べる場所。区画内には、インスタント食品の自販機や給湯設備、残り汁を捨てるシンク、食べ終わった容器を捨てるゴミ箱、立食用のテーブルが置かれています。インスタント食品は臭いが強く、食べていない周囲の人からは気になるところがあります。他社フェリーのようにパブリックスペースでのインスタント食品の飲食を禁止するだけでなく、食べられる場所を指定するのも対策の一つだと思います。
レストラン席の中央にある透明のピラミッドは、葉菜を天井に付いた電灯の光で栽培する設備で、収穫物をサラダ等の料理に添える用途に造られたそうです。残念ながら、うまく運用できていない様子。せっかくの設備なので、何か植物を植えてはどうでしょう。
手荷物庫は、その名のとおり、長尺物や大きな手荷物を預かる保管庫です。乗船中に使用するのはアメニティ類や着替え程度でほとんどは使わないので、徒歩乗船客にとってはこのような設備はありがたいです。
ドックフィールドは、ペットと遊べる予約制のスペースで、最近就航する新造船では、ウィズペットルームと併せて設置される場合が多くなっていますが、こちらもすずらん、すいせんがフェリー初の設置です。
コンファレンスルーム | インサイドルーム間の吹抜け | カップ麺コーナー |
光栽培設備 | 手荷物庫 | ドックフィールド |
上記以外に、卓球台やランニングマシンのあるスポーツルームや、カラオケ・ビデオが楽しめる個室のビデオルーム、ゲームコーナー、チャイルドルーム、マッサージコーナー、PCコーナー、写真展やパネル展が行われるギャラリー、コインロッカー、コインランドリー、衛星通信タイプの公衆電話等の設備があります。
全長 | 224.5m |
全幅 | 26.0m |
総トン数 | 17,382t |
旅客定員 | 613名 |
車両積載台数 | 乗用車58台、トラック158台 |
造船所 | 三菱重工業長崎造船所 |