糠平湖を挟んだ国道273号線の反対側に古代ローマの水道橋を思わせるようなコンクリート製のアーチ橋があります。タウシュベツ川に架かるこの「タウシュベツ橋梁」は、旧国鉄士幌線(帯広~十勝三股)の鉄道橋として1937年に建設されたもの。

その後、糠平ダムの建設が計画され、ダム湖である糠平湖の底に線路が沈んでしまうことから、国道側に付け替えられることになり、鉄道橋としての役割を終えました。

この橋は、雪解け水によって糠平湖の水位が上がる6月頃から湖の底に沈んでいき、水位が下がる翌年1月頃になると再び姿を現すことから「幻の橋」とも言われています。

タウシュベツ橋梁2

士幌線は、線路の付け替えられた後も30年近く森林資源や農産物の運搬、観光客の輸送に利用されましたが、国鉄の分割・民営化に伴い1988年に全線廃止となりました。

アーチ橋群の一部は今もそのまま残されており、近年、開拓の歴史を伝える産業遺産としてその価値が認められ、2001年には北海道遺産に指定されました。しかし、湖の中に沈んでしまうため、タウシュベツ橋梁は立地条件が悪く、他の橋に比べて風化が進んでいます。この橋の姿が見られなくなるのはそれほど先のことではないかもしれません。(2003年記)


※この付近は羆が出没するため、少なくとも熊よけ鈴の携行が必要です。